壁1


 和歴五一二五年、カドマカフは侵略された。
 空を埋め、光を遮る巨大な円盤から、まるで黒い糸が垂れ下がっているかのようだった。アリの行列のようでもあった。
 その異様な光景の前に、カドマカフ人は、肝を潰し、声を呑み、誰もが空を見上げていた。
 わらわら、わらわら、と、地上に降りてきたのは、我々より少し大きいだけの同じ“ヒト”であった。
「我々はチキュウから来た。この星に永住したい。抵抗すれば、うち殺す」
 怪物のような力と野蛮な性格のチキュウ星人は、カドマカフ人の安穏を崩落させ、恐怖のどん底に陥れた。
 しかし、どれほど凶悪で強大な力をもってしても、我らカドマカフは撃ち落とされないだろう。
 かのこどもたちが、我らにあるかぎり。
 さあ、我らを守りたまえ。
 永遠のこどもたちよ――。

 ―『かわりゆくカドマカフ』(作者不明)より抜粋―


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