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 なんでこんなことしなきゃいけないのかね。俺ってば、生粋のロックミュージシャンよ。ミュージシャンの本分ってライブでしょうが。俺たちRIPOSTEとみんなで愛を投げつけあうキャッチボールね。
 俺たちは、ステージの上で魂を奏でる。みんなは、それに共鳴して熱狂する。それがどんどん加速して俺たちの魂をゆさぶる。完璧。もうさ、これでいいじゃん。俺らの活動範囲は、ステージってだけにしてほしい。なにが悲しくて、愛するナオと小生意気なケイのなれ初め話を書かなきゃいけないわけ。 
 俺、失恋したのよ。
 ほんとはさ、これ書くの俺じゃなくてもよかったんだ。ナオでも(ああ、ナオは無理か)ケイでも、なんならエスでも。
 俺って頼まれたら断れない性格なんだけど、でも、こればっかりは断りたかったね。失恋でえぐられた傷口に塩を塗りこむ作業は誰だった嫌でしょうよ。
 あーあ、しょうがない。こんなんだけども俺だって社会人なわけで。簡単に言えば、事務所の方針、逆らえないわね。要は、話題性なんだってさ。大人ってきったねーの。
 ひとつ、前置きしておくけど、俺、文才ないから。みんなも知ってると思うけど、セカンドアルバムの『愛欲のブーメラン』、あれね、俺が作詞したの。大真面目に書いて、アレ。
 だから、期待しないでね。


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